Fender Espritの歴史早わかり
vintageguitar.comにFender Espritの歴史について詳しい解説記事があったのでご紹介。さらに詳しい写真などはMaster Seriesのサイトに詳しく載っています。
今からおよそ25年前ダン・スミスはあるアイディアを持っていた。それはソリッドギターにルーティング加工でチャンバーを設けたものだった。このチャンバーは理論的にはより深い反響音を生み出すもので、彼はこのギターの構造やデザイン、シェイプなどをまとめていた。
1980年代初頭、フェンダーはギブソンのセミアコの対抗馬となるモデルの開発に関心を持っていた。これらは単純にギブソンのモデルをコピーしたものではなく、プレイしやすく、フェンダーの既存ラインナップでは実現出来なかった特徴を備えたギターになるものだった。フェンダーはスミスに彼が温めてきたコンセプトの提供を要請し、フェンダーのラインナップ、カタログに全く新しいモデル”マスターシリーズ”が加わる事となった。
ダン・スミスがデザインした2つのモデル、FlameとEsprit
FlamaとEspritはどちらもアルダーボディで、ボディ内部にチャンバー加工が施されている。メイプルトップ、セットネックというスペックだった。
Flameのボディはギブソンのレスポールよりもわずかに大きく、ギブソンのSGのようにダブルカッタウェイとなっており、さらにカッタウェイはオフセットとなっている。
シャーラー製の特別デザインの2基のハムバッカーを搭載。なおテールピースとファインチューナー付きのブリッジもシャーラー製だ。コントロール類は4コントロールとされ、多彩な音色を実現した。そしてこのモデルはレスポールの対抗馬として用意された。
EspritのボディはFlameよりもわずかに大きく、左右対称のカッタウェイとなっている。Flameと同様にシャーラー製の特別デザインの2基のハムバッカーを搭載。なお、テールピースとブリッジもシャーラー製で、スタンダード以外のモデルにはファインチューナー付きブリッジが搭載される。このモデルはギブソンのES-335の対抗馬として用意された。
3つめのモデルとしてJames D’Aquistoによってデザインされたアーチトップデザインのモデルがある。そして、これら3つのモデルは、フェンダー・マスター・シリーズと呼ばれた。
デザインが承認されるとフェンダーはこのモデルの量産と販売に力を入れはじめた。しかしながら、当時のフェンダーの技術ではこの複雑なギターを量産することは不可能であったため、フェンダーは日本のフジゲン楽器(当時はIbanezのギターを生産していた)と契約を交わし、量産ラインを敷いた。
3つのバリエーション
フェンダーは最終的にこれらマスター・シリーズのそれぞれに3つのバリエーションを持たせることにした。
FlameとEspritはスタンダード、Elite、Ultraの3つのバリエーションに別れ、スタンダードはドットインレイ、クロームチューナーを装備。Eliteはダイヤモンドフレーク・インレイ、パーロイド製チューナーを装備。そしてUltraはブロックシェル・インレイ、エボニーチューナー、ゴールドハードウェアという仕様だった。
カラーリングはスタンダードはブラック、オータムサンバースト、チェリーサンバーストが用意され、EliteとUltraに関してはスタンダードのカラーに加え、ホワイトフロスト、ピンクフロスト、キャンディレッド、キャンディーグリーンメタリックバーストが用意された。
スミスとフェンダーはKahler製トレモロブリッジをオプションとしてこれらのギターに対して用意し、最初からこのブリッジが搭載されたモデルもごく少数のみ生産された。
そしてロベン・フォードモデルへ
これらのモデルの正確な生産台数は定かでは無い。しかし1983年後半から1985年の間に数千台が製造されたとされている。スミスは、このギターはその品質と世界に与えた認識という面で、成功したモデルだったと回想している。
その後、このモデルの生産は落ち目になり販売数も落ち込んでいった。しかし1986年にロベン・フォードがエンドーサーからEspritを購入したことから、フェンダーはこのモデルでロベン・フォードモデルを製作することを決めたのだった。
Espritの面白みは特徴のあるセンターの音だと思う。
Fender Espritは細かい部分のみ調整を加えてほとんど購入したままで使用してますが、今までの自分のギターとの関わり中ではかなり珍しいほうかなと。
ほとんどの場合、配線、ポッド、コンデンサー、ピックアップ周りを弄くり回すのが常で、ここ数年のメインギターはコンポーネントギターのWarmothを自分でセレクトした部品で組み上げたテレになってます。
加えた変更としてはピックアップセレクターのゴムワッシャーをレスポールジュニアのセレクタープレートに変えたという点。これはマニアックな友人に教えて頂いたアイディアで、純正だとゴムワッシャーでぐらつかないように配慮されてるんですが、さすがに85年製。ゴムはボロボロで見た目も悪く、しっかり固定も出来ないのでグラグラしていたというわけです。
このレスポール用セレクタープレートは裏面にやたらと強力な両面テープが付いており、剥がすのを断念して剥離紙を剥がさずそのまま使用して、表面の刻印のみサンドペーパーで削り落として使用しています。落ち着いたつや消しになったので結果的には正解でした。
思うに、Espritの最大の特徴は独特のセンターの音で、ロベン・フォードのカッティングなどに顕著に聞くことが出来ます。335でも、テレでもレスポールでも出ないこの音。フロント寄りリヤ寄りでさらに細かくコントロール出来る点も素敵。ちなみリアでペダルを踏むとさらに芳醇。。
次に何かするとしたらピックアップをSheptoneに変えることくらいかと。
Sheptoneはまだまだ知る人ぞ知る的なブランドですが、アメリカの完全手工業でオッサン一人で作ってるブランドです。非常にバランスの良いヴィンテージサウンドが特徴で、このオッサンが古いピックアップをばらしまくって製法から何から再現してるみたいなので、実に素直な音がします。
今テレキャスで使用していますが、今まで使ってきたピックアップの中で随一の音です。そして安い。(※現在サイトリニューアル中でオーダーストップ中ですが。。)
いずれ購入した時には載せかえレビューなんかしようかと思ってます。
ちなみにオーダーするならこの本サイトから英語で注文するのが吉です。あれこれ言えばマグネットは何にする?だとか巻き数だとかもオーダーに対応してくれますし。国内でもディーラーはいるにはいますが、アホかというくらいボラれますのでご注意を。
そもそもFender Espritとはなんぞや?
あまりにもEspritに関する資料がないので自分も確実な事はわからないですが、EspritはMaster Seriesと言われる一連のEsprit、Flame、D’Aquistoのモデルの一部だったようです。
さらにEspritにはStandard(今回自分が購入したもの)、Elite、Ultraの3種類が存在し、どうやらこの中のUltraがロベン・フォードモデルの元になったようです。(下記サイトより)
http://www.masterseriesguitars.com/
画像を上記サイトより引用させて頂いておりますが、EliteはStandardと比較するとインレイが異なり、ブリッジがファインチューニングタイプ、ボディバインディングが5プライ、コイルタップが付くなどの違いがあります。
これまた上記サイトより引用させて頂いておりますが、Ultraはインレイがブロックタイプ、ボディのバインディングが7プライになりEliteと同じくブリッジがファインチューニングタイプでゴールドクローム、コイルタップ有りとなっています。
なおFlameはEspritとほぼ同じ見た目ながらツノの長さが左右で異なり、ボディ幅が少し狭いものです。思うにFlameはEsprit以上に国内では探しにくいかもしれません。
(画像を上記サイトより引用)
1984-1988 FENDER FLAME STANDARD
なお、上記サイトにはタイムライン(製造の歴史の流れ)の紹介もあります。
(画像は上記サイトより引用)
それによると、83年にUltraのプロトタイプが日本で製造され、84年に生産が開始。87年にFenderの新経営チームがロベンフォードモデルの製造を日本で開始。これらのベースはEsprit Ultraだったとあります。
88年にロベン・フォードがTalk to your daughterをリリース。ここで初めてロベン・フォードがカスタムショップモデルを使用し、88年のGuitar Player Magazineに詳細が記載されているとのこと。読みたい。。89年にロベン・フォードのシグネイチャーモデルが$1,499でカタログに載り、1993年が日本でロベン・フォードモデルが製造された最後の年となったようです。
94年からロベン・フォードモデルの製造はアメリカのカスタムショップに移り、3つのモデル(Ultra FM:フレームメイプルトップ、Ultra SP:スプルーストップ、Elite FM:フレイムメイプルトップ、ソリッド・マホガニーbody)が製造され、2002年に製造が中止されたようです。
2005年にダン・スミスの手によって韓国製として復活。ボディとネックはマホガニー製。トップは3〜4ピースのマホガニー製。なお、ボディ裏にはコンター加工はないようです。
自分の購入したStandardは元オーナーによると85年製ということで、上記サイトのシリアルナンバー情報の情報からも85年製のようです。このシリアル情報のページによるとMaster Seriesは少なくとも83年から85年の間に少なくとも3,665台製造されたとあります。(※ちなみにシリアルは8桁。仮にシリアルが40300624だとして、読みかたは、最初の1文字が年号、続く2文字が製造月。続く5文字がナンバリング。)
海外のフォーラムや国内のサイトでもEliteとUltraをStandardと混同していたり、カスタムショップ製のUltra FMとUltraの混同などが見られますが、長いフェンダーの歴史の中でもマニアックすぎ、かつ個体数の少ないギターだから仕方ないといえば仕方ないですかね。。
Fender Espritを購入した
長年探していたFender Espritを購入。(1985年製)
購入時はブリッジが割れていたので格安でGet。ちなみに購入先はイギリス。完全にオリジナルではなくある程度の改造が前オーナーによって施されている状態。
主な改造点としてはこんな感じ。購入したらどうせ交換していた部分なのでありがたい。
・ナット交換
・フレット交換
・配線交換
・ポット/ジャック交換
・ピックアップ交換(gibson burstbucker)
ちなみにオリジナルパーツは全て残っており、ピックアップのマウント方式がテレキャスと同じくボディ直付だとわかる。)
ギブソンタイプのピックアップを取り付けるにあたり、ザグリを少しばかり彫り込んでエスカッション吊り下げ式になっており、ピックアップ幅が狭くなるためザグリ内部には木端を接着してピックアップが遊ばないようにという配慮が見られる。
ちゃんとしたショップで加工したとの話だったけども、確かに丁寧な加工でいいですな。
配線も非常に綺麗。コンデンサーは0.047。
ロベン・フォードモデルはスプルーストップのモデルとメイプルトップとあるようですが、Espritはメイプルトップ。
ネックは真ん中にメイプル、サイドにおそらくアルダーの3ピース。
ヘッド部分のみ5ピースになっています。
バックは恐らくアルダー。